私たちの知らないところで起きている飢餓問題の現状を知ろう。
2023年02月09日
「複合危機ポリクライシス」への取り組み
ユニセフ(国連児童基金Unicef)は、2022年について世界的に非常に困難な年だったと発表した。継続するパンデミック、ヨーロッパでの大規模な戦争、エネルギー危機、インフレの進行、食料不安が、特に子どもたちに大きな打撃を与えているとの理解を示した。
紛争と異常気象により数百万人の子どもが家を追われ、栄養失調に苦しみ、人道支援を必要としているにもかかわらず、ウクライナでの戦争は食料とエネルギー価格の上昇をもたらし、さらに貧困と飢餓を加速させている。
ユニセフの新報告「2023年:ポリクライシスにおける子どもたちの展望」によれば、これらの危機は相互に複雑にからむ同時発生の危機的状況であり、子どもを貧困と飢餓に追いやっている。
特に経済的な発展途上国においては、その影響が顕著である。食料とエネルギーの価格上昇は、そのまま社会的弱者である子どもの栄養失調に直結し、さらに医療へのアクセス制限、定期的な予防接種さえ困難にしている。またパンデミックによる学校閉鎖は、学習機会の損失となっており、今後数年にわたって子どもの将来に影響を与えることになる。
世界的な賃金とインフレ急上昇、財政の引き締め見通しは、持続可能な開発目標達成に必要となる教育資金格差を生むことになる。そして気候変動が、この状況をさらに不安定化させる。パキスタンの壊滅的な洪水、東アフリカでの干ばつは、子どもを教育、食料、医療から疎外する結果となり、さらに貧困と飢餓を推し進める結果となっている。
現況、ユニセフは2023年に3億人の子どもへの人道支援が必要となると試算している。言うまでもなく、これは人類の未来の問題、国際社会によって取り組むべき課題となっている。
わずかな希望は、食料と石油の価格がピーク時よりは下落している点である。また可能性のある解決策も模索されている。有効な政策は、現金給付、食料援助などの社会保護プログラムへの投資増加である。貧困と飢餓に圧迫される子どもを世帯ごと救済する方法である。また学習機会の補填と再確立は、子どもの栄養失調の早期予防、発見、治療にもつながる重要な視点となる。これらの政策の効力を発揮するためには、子どもの権利と福祉に関する法制化、社会全体での取り組みが必要となる。貧困と飢餓の撲滅は、そのまま子どもの将来、人類の未来への投資となり、ポリクライシスへの対策ともなる。
(写真)Image by guillermo gavilla from Pixabay