私たちの知らないところで起きている飢餓問題の現状を知ろう。
2022年03月31日
ロシアが隣国ウクライナへ侵攻した2月24日以降、ウクライナの農村地帯における「貧困と飢餓」の危険性が急激に高まっている。ウクライナは鉱工業と農業の大国である。同国は以前「欧州のパンかご」とも呼ばれていたが、昨今のグローバルな食料供給事情においては、世界の食物庫とも言える。「黒い土(チェルゼーノム)」と呼ばれる肥沃な土壌の3割を擁するウクライナの紛争状態は世界経済と食糧安全保障を直撃する事態となった。事実、ロシアのウクライナ侵攻は小麦の値上がりなど、世界的な食料品の値上げへと反映されつつある。紛争による難民発生、生活破壊による貧困化、経済格差による飢餓の危機、世界的な食料の不足という悪循環はウクライナに限らず、人類全体の問題である。
国連によれば現時点においてさえ、ウクライナでの国内避難民は最大670万人となる。最大では1,800万人が直接的な影響を受けると予測される。ウクライナ侵攻は、世界の食糧事情を支える同国農村部、また点在する農業コミュニティの混乱と崩壊を招くことになる。
特にロシアが独立国として一方的に認定するドネツク州などは、ウクライナの農村部でもあり、農産業従事者の減少に直接影響するとみられる。
このような情勢下で、国連食糧農業機関(FAO)は変化する状況に対応しながらも既存の脆弱性、迅速に解決すべき課題を評価し支援する姿勢を見せている。進攻の影響下にありながら現地に残る農家を保護するためには、あらゆる種類の人道支援が必要となる。
FAOによれば、ウクライナ国内避難民に向けたホストファミリーの募集と整備、また小規模農家が事業継続するための耕地貸与など、喫緊の課題に向けて資源を注入する。
これらの状況を鑑みて、ウクライナ危機における「貧困と飢餓」を予防するために、FAOは緊急支援計画を策定中である。