私たちの知らないところで起きている飢餓問題の現状を知ろう。
2021年12月14日
ベトナム南部に広がる肥沃な平原メコン・デルタは、メコン川の淡水と海が合流する水域である。しかし近年の極端な気候変動により、塩水侵入の頻度と深刻さが増加している。
要因は複数ある。上流ダムの建設、河床採掘、地下水の過剰抽出だ。海面上昇と気候変動による干ばつは頻繁に発生している。結果、メコン・デルタに住む人々の生活が破壊され「貧困と飢餓」に直面することになる。
たとえばチャビン州の農家は、淡水域への塩水侵入により生活手段を失った。植物や農作物への塩害となったからだ。
国際農業開発基金(IFAD)は、この農家に対して、新農法を学ぶ機会を提供し、生活再建に協力した。また2014年から2020年にかけてメコン・デルタの小規模農家を支援するために塩分監視と予測システムが開発された。
2018年、このプロジェクトは新興企業と提携。汽水域に自動監視ブイを設置され塩分、アルカリ度、pH、水位など計測が始まった。スマホ・アプリも開発され、アプリ「Mekong」は、2021年9月までに約1万1,000回ダウンロードされた。
このような官民の連携は、地方の小規模生産者を支援できる新しい技術を展開するために不可欠である。多くの民間企業や団体は気候変動に対抗する技術を所有しているが、各地方ごとの状況に応対するためには行政手続きが必要であり、その経験が不足していることも多い。
メコン・デルタの小規模農家にとって、水中の塩分を監視し、農作物や家畜を保護することは気候変動に対応し「貧困と飢餓」に陥らないために重要なことである。チャビン州の農家は語る。「汽水域の塩分濃度をリアルタイムで計測しモニターすることは、高血圧の人が血圧を監視するようなものだ。時期を逸し、それを怠ると手遅れになってしまう」――ベトナム・メコン川における気候変動と「貧困と飢餓」への対策は官民一体で前進している。
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