2020年06月11日
COVID-19がもたらしたシステム革新
ロンドン大学「食糧政策センター」所長コリンナ・ホークス氏は6月18日、国際食糧政策研究所(IFPRI)を通じて、コロナ禍と食の安全保障について見解を公表した。要約的に紹介する。
まずパンデミックに続く都市封鎖は、民間の食糧供給網に打撃を与え、貧しい人々の栄養状態の要である公的支援システムを混乱に陥れた。しかし、一方で、これらの問題は官民問わず、新たな支援や起業の機会ともなっている。
パンデミックと都市封鎖は、過剰生産と極端な欠乏、需要と供給の崩れた均衡、世界における肥満と飢餓など、現在進行中のさまざまな課題を浮き彫りにした。短期的な解決のために革新的アイデアと行動がなされてきたが、中長期的にこれらの対策が有効か否か、過去も踏まえて厳密に評価すべき段階が来ている。
代表的なイノベーションはすでに世界各地で見られている。例えば中国における「デジタル技術」利用は目を見張る。需要と供給をオンライン・プラットホームで調節する。また、インドでは政府開発のアプリが農家と運送業者のマッチングを支援。マラウイでは都市封鎖によって運べないトマトを加工食品とし、オンライン販売化することで、新たな需要を見出している。
「流通」にも大きな変化が見られる。フィジーではパンデミックによって市場参入が不可能となった生産者のために政府が援助を始めた。ネパールでは、地域社会が「農産物救急車」を設立。市場での野菜供給の手助けとなっている。
食料不足に悩む人々への対策も進んでいる。特に都市レベルでの新施策が目立つ。ペルーのリマでの食品配達から、シエラレオネのコミュニティ・キッチンなど、2020年6月中旬までに、173カ国で621の新しい社会保護措置が制定されている。
言うまでもなく、これらがどこまで機能しているかは不明である。しかし、これらの技術革新の方向性は明確だ。まず「貧困と飢餓」に直面している人々への対策が明らかに進んだ。官僚的、財政的、物流的、技術的な理由ではなく、人々の意志が変化と援助を成し遂げている。次に、人類全体のより良い食生活、「貧困と飢餓」撲滅のためには、明確な計画に基づいた協調的、創造的、横断的な介入が必要となる。政府、企業、地域社会が協調して、新たな革新を確立している必要がある。これには厳密な法規制もグローバル資本主義の介入も利用することになる。さらに、これらの技術革新は、次なるイノベーションへの機会となる。
確かにCOVID-19は食糧システムを破壊した。しかし、パンデミックと都市封鎖が「貧困と飢餓」撲滅への、前例のない革新のチャンスとなっている。
<a href="https://www.photo-ac.com/profile/2364584">毛並良好</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真