2020年01月10日
カナダ、ムスリム・フードバンクの取り組み
2017年、英国においてキリスト教系フードバンクが「意図せずして」他宗教の人々を除外しているという研究報告がなされた。それぞれの宗教における食事制限の理解が違うからだ。ヨーク大学による当時の報告によれば、4人に1人がパキスタン系ムスリムという人口構成の英国ブラッドフォードでさえ、フードバンクが想定しているのは、特に制限のないキリスト教的な食事のみだった。しかし、そのような状況も変わりつつある。
例えば、カナダ・ブリティッシュコロンビア州には注目すべき取り組みがある。「ムスリム・フードバンク&コミュニティ・サービス」だ。同フードバンクは、貧困家庭への食糧支援だけでなく、イスラム教のハラール、ユダヤ教のカシュルート、ベジタリアン、ビーガンなど採食主義と宗教的食事制限にも対応している。
このように対応すれば、英国ブラッドフォードのような状況にも適切な支援を行える実例となる。カナダのムスリム・フードバンクは都市型の貧困と飢餓を支援するために、各種の社会的支援、若者世代への支援プログラムを提供し、包括的観点から支援を受ける人と家庭が社会において孤立せず、尊厳ある自立した市民となれるようにサポートする。
同フードバンクは、これらの観点と必要に基づいて、特に宗教的な食事制限がある人々への専門的支援を行っている。特別な支援が必要ない場合、地元の別フードバンクが対応するなど、連携体制も構築。具体的にはハラール食品として、米、小麦粉、油、砂糖、穀物、缶詰食品の詰め合わせ、パスタ、お茶、肉が用意され、世帯規模に応じて配給できるように準備されている。また寄付が多ければ、クッキー、スパイス、飲料、その他の雑貨などにおいても対応可能となるという。
ムスリム・フードバンクは、毎月約600世帯、約3千人を対象に食糧の配給支援を行っている。先進国においても飢餓対策、貧困は喫緊の課題となっている。