私たちの知らないところで起きている飢餓問題の現状を知ろう。
2019年12月16日
国連は、2020年を「国際植物防疫年(International Year of Plant Health 2020:IYPH2020)」と宣言。国連食糧農業機関(FAO)もその活動に参加する。
植物は、人類にとって生存に不可欠な空気の源であり、食物の大部分を占めている。しかしグローバル化した経済活動において「植物を健康に保つ」ことはなおざりにされてきた。
FAOの推定によれば、年間40%の食用作物が害虫・病気のために失われている。結果、農業被害は深刻化し、数百万人単位の食糧不足を招くことになる。特に貧しい農村部の人々にとっては、収入源と食糧を同時に失うことになり「貧困と飢餓」の状態に陥りやすくなる。
気候変動と人間の生産活動は、生態系と生物多様性に変化を与え、害虫の繁殖環境を整えた。過去10年で3倍になった海外旅行者と国際貿易は、世界的に害虫や病気を急速にまき散らし、在来植物の生存環境に大きな損害を与えている。
害虫と病気から植物を保護する「植物防疫」は、経済的観点からも意義深い。害虫や病気は、一度定着すると根絶することはほぼ不可能に近く、その管理コストは膨大となる。食の安全保障への壊滅的影響が起こる前に、予防が必要である。
「植物防疫」を考えて実行するためには、それぞれが注意しなくてはならない。国境を越えて旅行するならば、どの植物、農産物が持ち出し可能か否かを理解しなくてはならない。また流通産業に携わっているならば、船、飛行機、トラック、電車に付着した害虫と病気を新たに拡散しないように注意せねばならない。そのため、各国政府が率先して「植物防疫」を制度化し、各取り組みを支援する必要がある。「植物を健康に保つ」こそが、貧困と飢餓を予防する。