2019年11月11日
飽食の国アメリカのいま
サンフランシスコ・マリン地域フードバンクの取り組み
「移民」が全世界で問題になっている。なぜ問題になるのか。なぜなら、彼らの「食糧」の確保が、そのまま移民を受け入れる社会の課題となるからだ。米国サンフランシスコ・マリン地域で「フードバンク」を率いるポール・アッシュ氏は、現在、トランプ政権下のアメリカは「飢餓・貧困・不健康」の悪循環に陥っていると訴えている。
2019年8月以来、米国への移民は「補足性栄養」補助プログラム(SNAP)に参加登録することが求められている。アッシュ氏によれば、これに登録しない場合、滞在の合法性が問題となる。事実上、「不法」移民をあぶり出すために、同プログラムが機能していると批判している。追放されないために登録を避けることで、アメリカに住む移民の人々の貧困化は進み、飽食の国で「飢餓」が始まる。移民家庭の子供にとって、学校や地域の放課後プログラムで食べる食事が、一日の主要な栄養源となってしまう。当然、空腹に悩む子供は学習に集中できず、収入クラスの固定、格差の再生産へと繋がってしまう。
アッシュ氏によれば、「そんな人々のためにこそ、慈善団体やフードバンクがあるのではないか」と政府関係者が自らの施策を正当化して言う。しかし、それらの実態は、現実にまったく即していない。そもそも移民の人々は、すでに慈善団体やフードバンクの利用者であるからだ。SNAPプログラムの提供する栄養素や食糧は、非常に限られたものでしかない。現行政権下で「飢餓の問題は、共和党か民主党かを問わずアメリカの問題だ。にもかかわらず、その社会的セーフネット全体が侵蝕されている」とアッシュ氏は語っている。
「サンフランシスコ・マリン地域フードバンク」によれば、同地域では5人に1人が十分な食事を得ていない。同団体は、特に「家庭」を中心に支援を続けている。また、同団体は、10月25日までに4万人が避難した「米国カリフォルニア州の山火事」への支援を表明し、すでに物資を調達している。
アメリカにおける「#end hunger」は、飢餓と貧困を終わらせるための取り組みだ。ハンガーゼロを達成するためには、国内外の政治的意思決定のみならず、地域に密着した人々の努力も欠かせない。