私たちの知らないところで起きている飢餓問題の現状を知ろう。
2019年06月10日
2030年までに中近東と北部アフリカ地域の「飢餓」撲滅を目指すならば、地元の食料生産を支援政策と天然資源の管理について改善策が必要となる。国連食糧農業機関(FAO)は、定例会議において、アラブ諸国へ「飢餓ゼロ:挑戦と機会」と題して呼びかけた。
紛争などで深刻な飢餓状態にある約5200万人
「この地域の天然資源の欠如や、水不足が主要問題であることを疑う人はありません。しかし、水資源の使用方法について、優れたガバナンスが欠如しているのです」とFAOシルバ事務局長が語った。約4億人を擁するアラブ諸国における水資源管理問題は、中近東および北アフリカ地域の飢餓状態の悪化に直結している。FAOは、資源管理のための国際協働機関の設置を求めた。
近年、中近東と北アフリカ地域においては「ゼロハンガー」のための働きかけにもかかわらず、その達成度においては深刻な後退が見られる。その大きな問題の一つが、すでに枯渇し減少し続けている天然資源「水」の問題である。水不足は、飢餓と栄養失調の増加、長期にわたる社会的・政治的な危機、気候変動の影響と経済的減速をもたらしてしまう。
最新の報告によれば、同地域18カ国において、紛争などを原因として約5200万人が飢餓状態にある。しかし、同時に成人の3人に1人が過体重・肥満の状態にある。
FAOは、紛争を終わらせ、持続可能な開発目標(SDGs)と「ゼロハンガー:飢餓の撲滅」を再確認し、食料安全保障、農業、貿易、水資源の管理政策、災害対策を含む国際的な相互補完関係を目指す。
ゼロハンガーのための取り組み
この会議に関連して、アラブ諸国代表のアフメド事務総長とオマーン農水省バクリ事務局長は、FAOとビジョンを共有しながら、同地域農業の共通課題として「水不足、土地の劣化、気候変動の負担」に取り組む必要性を強調した。また「誰もが飢餓撲滅のために役割を果たし、一人ひとりがさまざまな方法でこの目標に貢献できる」とし、食糧廃棄率の改善、エネルギーの適正使用、リサイクル資源の活用など、市民生活における意識向上を訴えた。小さな取り組みが、飢餓状態にある5200万人を支援する道となるからである。
(写真キャプション)
学校の家庭菜園で作業するシリアの子どもたち ©FAO/Zaki Khozam