私たちの知らないところで起きている飢餓問題の現状を知ろう。
2018年09月24日
「世界最悪の人道危機」――イエメンにおける国連の支援活動が続いている。2011年、アラブの春「イエメン騒乱」以来の紛争激化、内戦長期化によるイエメン国内の飢餓対策は、今後も国際社会の継続的支援を必要としている。
アリー・アブドッラー・サーレハ前大統領の反政府デモ狙撃に端を発したイエメン騒乱は、サレハ大統領の退陣後、暫定大統領となったアブド・ラッボ・マンスール・ハーディとイスラム武装組織フーシの対立となり内戦化した。2015年以降、「アラビア半島のアルカイーダ」も加わり泥沼状態となっている。
背後には、シーア派のイスラム教国であるイラン、そのイランとの対決姿勢を強めるスンナ派のイスラム教を掲げるサウジアラビア諸国連合(エジプト、ヨルダン、スーダン、バーレン)、サウジアラビアの友好国アメリカなど、各国の思惑がある。イエメンを戦場に、イランとサウジアラビアの代理戦争が起きている。2017年時点で、すでに5万人が死傷したといわれ、200万人が難民化した。
抄訳
9月24日の国連発表によれば、ニューヨーク国連本部におけるイエメン支援会議において、人権問題を扱うリーズ・グランデ氏は「世界において人々がこれ以上苦しんでいる場所はほかにない」とイエメンの現状を訴えた。
グランデ氏はいう。かつてない規模の人道危機とその深刻さが繰り返し報告されて、すでに4年が経過。国内難民化した約200万人、医療支援を要する約1600万人など、現在、イエメン人口の75%に、生存のための基本的援助が必要不可欠といわれる。「紛争のために10分に1人の子どもが死んでいます。女児の7割が18歳になる前に生活のために結婚せざるを得ません。830万の人々が、目覚めた時に朝食にありつけず、4人に1人が栄養失調状態にあります」
イエメンの通貨「リアル」は、長引く内戦により、すでにマイナス300%の暴落を記録。このまま下落すれば、さらに1,200万人が飢餓状態に陥ると予想される。公共インフラの基礎となる教職員、保険・医療従事者、水道・衛生管理者、そのほか公務員を含む、何十万世帯がすでに収入源を失っている。
報告によれば、150以上の支援組織が現地入りして活動している。毎月800万人が食糧援助を受け、170万人の児童と妊娠中・授乳中の女性への栄養補助が提供されている。数百万人が緊急時現金支援を受け、100万人を超える人々が保護された。
世界保健機関(WHO)テドロス・ゲーブレイエズス博士は、コレラ、ジフテリア、ポリオに対する予防接種などの医療支援を約1100万人に対して行っていると報告。2,000を超える疾病監視施設の設立により、必要な対応が可能となった。
グランデ氏は、飢餓を減らし、栄養失調を改善するために、国際的な政治介入の必要性と共に次の3点を最優先事項として指摘。第一に、コレラ感染と流行の防止、次に民間人保護の徹底、そして戦闘終結のための当事者間の問題解決である。
元記事:https://news.un.org/en/story/2018/09/102033