ハンガーゼロの様々な活動の報告をいたします。
2023年12月18日
ウクライナで難民緊急支援活動に参加していた深水さんの報告を2回にわたり掲載します
ウクライナを巡り、発電機や食糧、衛生用品などの配給やキッズプログラム、日本文化交流会、避難所・避難民家庭の訪問と経済的援助など幅広い支援を行ってきました。2回目のウクライナ入りということで現地にはすでに友人もおり、現地の雰囲気も分かっていたため、前回の支援よりも人間関係を築くことに注力できたように思います。
ウクライナ国民の中にある分断
避難民の中には怒りや憎しみがあります。スイッチのようなものがあって急に同じ不平や不満を繰り返して訴えてくるのです。1年半以上続く不安定な生活の影響が大きいと思います。
「(ウクライナの)西部の人間は避難民のことを理解していない。私たちは文字通り全てを失ったんだ。空襲警報だけが戦争じゃない」とは、ある避難民の言葉です。どこか西部のウクライナ人や政治家を非難しているような響きがありました。前回の報告(本紙8月号)で南東部と西部とで戦況が異なるとお話ししましたが、この避難民の言葉の背景には現行の地理的な戦況の違い以上の隔たりを感じました。
デニスさんは戦争で片足を失ったお母さんと一緒にウクライナ西部リヴィウで避難生活を送っています。彼は次のように語りました。「政府は何もしてくれなかった。母の義足はスロヴァキアからの寄付だ。キーウは遠い、戦前からずっと遠かったんだ」。デニスさんの政治不信に西部と南東部の長きにわたる隔たりを感じました。彼自身も助成金に依存的な傾向があり開戦から仕事をしていませんでした。物資依存や無気力は多くの避難民が抱える問題です。写真はそんな彼を励ますために一緒にペンキ塗りの奉仕をした日に撮ったものです。先日、王さん(ハンガーゼロ・ウクライナ緊急支援担当)から、デニスさんが炭鉱で働き始めたとの連絡がありました。とても嬉しかったです。ただ、これから彼自身がめげないで仕事を続けられるように励ます必要があると感じています。彼には薬物やタバコ、お酒の依存があるのではないかという噂があり、そのことが周りの人々からの彼への信用を落としているからです。
ウクライナはソビエトの長い影(政治、歴史、地理、言語などが独立以前から受けてきた影響)に覆われてきました。そこで蓄積されたあらゆる社会問題−汚職、失業、依存症、家庭崩壊−が戦況と複雑に絡まり合い人々の心を暗くし、人と人との間を分断しています。
戦禍における教会の必要性は増している
東部ハルキウ市内の教会に発電機を届けた時、そこで教会職員のボーバさんと出会いました。ボーバさんによると、戦争が始まってからこれまでに200名が洗礼を受け、新しく7つの教会ができたそうです。しかし、戦前の教会員の多くは国内外に避難し散り散りになってしまいました。今、ウクライナ中で教会が散らされ、又生まれています。活動的な多くの教会は国内外の人道支援団体の窓口となっていて、このことが避難民に大きな励ましとなっています。教会が支援とそれを必要としている人をつなぐことができている理由は2つあるように思います。1つは教会が宗教法人として公的な信用を得ているため、もう1つはウライナ全土において、戦前から教会が地道に地域の ニーズに寄り沿い続けてきたためです。戦渦における教会の働きの根本は平生と変わらず、その必要は増しているようです。
ロシアの爆撃で破壊されたハルキウの小学校
徴兵制
現地でゼレンスキー大統領についてどう思うかを聞くと、若者からは肯定的な意見をよく耳にします。けれども、中年層からは否定的な意見も聞きます。これは戦前の汚職撤廃政策に対する評価でもありますが、徴兵制も大きな理由の一つとなっています。国外には避難できず、招集されれば兵役に就かなければならない。選択の自由がないことが反感を買っているようです。
ウクライナには徴兵を逃れるために、学生になったりボランティアになったりする人がいます。「徴兵逃れ」と呼ばれる彼らはウクライナ国内でも度々報道されています。「賄賂で徴兵逃れの男が逮捕」「通りで取り押さえられて兵舎に連行される男の動画」など様々です。ネガティヴな響きのする「徴兵逃れ」ですが、その現実は複雑です。ある男性は「自分のような勇猛果敢に戦うことのできない平和主義者は、戦地に行っても何もできず死ぬしかない。それなら国外に避難した家族に会うために絶対に生き延びるんだ。そのためならなんでもする。それにボランティアとして国のために戦うこともできる」と話してくれました。彼は政府から身を隠すために避難民の申請を出しておらず、助成金を受け取っていません。
タラスさんは食料配給を続ける西部サンビルの教会員です。小さな2人の子どもと奥さんを支えるお父さんでもあります。いつも食料配給の現場を冗談で明るくしてくれるムードメイカーでしたが、先日召集され、現在どこに所属しているのか誰にもわかりません。徴兵された者には銃を持たない権利があるそうです。タラスさんは自分の信仰のもと、銃を手にしないで戦いたいと話していました。けれど、旧ソ連式の軍上層部の人間がどこまでクリスチャンの主張を受け入れるのか教会員は心配しています。
ある青年は大学でドイツ語と英語を学んでいます。将来は翻訳家になりたいそうです。けれど卒業すれば彼も徴兵されます。彼は招集されれば銃を持って戦うと言います。リーダーに従い国の平和のために戦うことが彼の信仰のあり方だからです。
下の写真は3月末に亡くなった志願兵のお墓です。彼は私の宿泊していた神学校の卒業生でした。享年23歳でした。
みな自分の正義によって人生の決断をしています。けれど戦禍において正しさの所在など誰にもわかりません。ただただ全ての人の平和と安全を祈るばかりです。
(次回掲載は2024年1月)
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