ハンガーゼロの様々な活動の報告をいたします。
2023年08月02日
写真はどちらも同時期にウクライナ国内で撮影したものです。上の写真は以前に報告したロシア軍による元被占領地域です。同村は砲撃や略奪によってがれきしか残されていませんでした。下の写真はウクライナ西部に位置するリヴィウと言う市街地です。観光業が回復しており、空襲警報が鳴っていてもお店で美味しいハンバーガーを食べることができました。(撮影:深水さん)
報告②/ハンガーゼロ ウクライナ緊急支援チーム深水典幸さん
私は冬から春にかけてウクライナを巡りました。ニュースの6月号に引き続き活動報告をさせていただきます。
いまウクライナでは国内においても空気感の違いがあります。それは軍事衝突のほとんどがウクライナ南東部で行われているためです。この地域に住む多くのウクライナ人はロシア語しか話すことができません。ウクライナの公用語はウクライナ語ですが、元は旧ソ連の構成国なので、全土においてロシア語も広く理解されています。また、ここは親露派運動の盛んな地域でもありました。僕が支援を通して出会う避難民たちもロシア語のみを話す人がほとんどです。ここで想像していただきたいことは、ロシアとの戦時下において、ウクライナ西部・中部(ウクライナ語を生活言語とする地域)で避難民たちが直面している生きづらさです。ロシア語を話すと売店で無視されてしまうことがあります。ロシア語が全面禁止になるというフェイクニュースに怯えることがあります。また、避難民であるのにスパイだと疑われてしまうこともあります。すべての人が国内避難民に対して消極的な訳ではありませんが、これらの"生きづらさ"は比較的安全な西側に避難することを選び難くしています。時に、避難民は自身の安全と尊厳を天秤にかけなければなりません。また、年齢や仕事、病気や経済状況など様々な理由から前線近くにとどまる人々がいます。ウクライナには避難すらままならない人もいれば、市街地でデートを楽しむ人もいます。
ウクライナ社会の抱える闇の深さ
下の写真の家族のようにもともと社会からあぶれていた人たちは、支援からも隠されてしまうことがあります。私たちはこうした貧しい避難民に食料や住居費の支援を行っています。ウクライナ国内には様々な人道支援団体があり、大きな団体は幅広く多くの人々を支援しています。また、私たちのように小さな団体は、大きな支援の網からすり抜けてしまった人々を支えています。大小問わず、みなで尽力しています。けれど社会の抱える闇はより深淵(しんえん)です。この家族のお父さんは就業が困難な中、ウクライナ西部にあるリヴィウの工場に再就職しました。しかし、彼が避難民であるという足下をみたウクライナ人の雇用主が給与を払ってくれませんでした。現在このお父さんはまだ砲撃音の聞こえる東部のハルキウに戻って職を探しています。
支援の現場で浮上する問題が深刻化
ウクライナ西部のサンビルという街には戦争当初から避難民に食料配給を行っている教会があります。国内避難民1,800人が対象として行われる配給は、子どもからお年寄りまで教会に集う人々の奉仕によって支えられています。人々の憩いの場所であった教会は今では物資倉庫になっています。もう一年以上続いていますが手を休めることなく、たまに冗談を交わしながら物資配給を続ける彼らの姿には静かな優しさが溢れていました。
避難民の中には虚偽の申告で少しでも多くの物資や助成金を得ようとしたり、十分な資産や収入が国内外にあるにもかかわらず、避難民制度を利用して海外でビジネスを拡大したりする者もいます。また、支援者の中にも支援を装った転売や詐欺まがいのビジネスを行う者もいます。こうした問題への対策は人々の体力や支援者の心を消耗する一要因となっています。また、いつまでも満たされることのない必要を前に、多くの支援者は無力感を覚えています。国内支援の現場では支援疲れが深刻化しており、ウクライナ人であっても支援の現場から身を引いて行きます。また、海外の人道支援団体も支援金が底をつき、次々とウクライナを後にしています。国内支援の現場は取り残されたような孤独感の中にあります。良心だけでは戦いきれない、支援する側にも支えが必要です。
国内避難民に寄り添い続ける日本人牧師
西部の支援疲れや東南部の破壊された村々を目撃すると、何もできないのではないかと思わされます。そんな中、私たちは国内支援を続ける日本人男性と出会いました。彼は黒海沿岸沿いで唯一戦火を免れているオデーサという街で働く牧師です。オデーサはロシア語話者が多く居住しているため、多くの国内避難民がやってくるのではないかと囁(ささや)かれています。彼の教会は避難民への物資配給や帰還兵への慰問、前線部への食料配給や救命道具の援助、学習支援をはじめとした子どもプログラムなど多岐にわたる支援を続けています。
戦争という真っ暗闇の中で、希望の光を見失わ ないことが持続的な支援につながるのだと、彼の言葉や身振りに学ばされました。支援を通して様々な牧師たちと出会いました。彼らに共通して言えることは、多忙であり、そして支援を続けているということです。寄り添うものとして揺るがない土台に立つことが、裏切られても人を愛し抜く覚悟を選び取らせているのかもしれません。そして彼らの周りには戦争の前からずっと支え合ってきた教会というコミュニティがありました。
ウクライナ人の多くは心のどこかをオフにしながら終戦に向けて走っています。さらに彼らはその先の未来を生きなければなりません。目の前に就学・失業などの社会問題が聳(そび)え立っています。彼らには未来に目を向けるための伴走者と希望が必要です。
深水さんのウクライナ報告①はここちらからご覧になれます
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