ハンガーゼロの様々な活動の報告をいたします。
2023年05月10日
西南学院大学ボランティアセンター(福岡市)が、2023年2月24日~3月2日の日程で、FHフィリピンの活動地ブラカン州ナボタスとマラボンで海外研修を行い、ハンガーゼロがサポートしました。参加された12名の学生さんの体験記が届きましたので、紹介させて頂きます。
私にできることは何か
重富 泉 人間科学部児童教育学科
私は4年間、ボランティアのサークルに所属していたのですが、新型コロナウイルスの影響により、私が望んでいた対面でボランティアを進めることが厳しい状況でした。そこで、実際に現地を訪れて、相手の反応を見ながらボランティアができる本企画に興味を持ち、応募しました。
実際に行ってみると、「私は貧困に苦しむ子どもや現地の方に会って少しでも役に立ちたいと考えて参加したはずなのに、食べ物が十分に与えられていない子どもたちがいる目の前で食べきれないご飯を残してしまったりして、活動目的を見いだせずにいる一方で、現地の方の温かさに毎日触れる日々で、本当に現地の方のためになっているのだろうか」といった葛藤がありました。
しかし、そんな中で、西南タイム(※1日の振りかえり)の時間に、「私たちが現地を訪れた、そのこと自体が子どもたちに希望を与えている」という言葉を聞き、心に深く響きました。貧困家庭の子どもたちは、それがあたりまえと思って過ごしていて支援を必要としていないこともあります。それでも、私たちが訪れることで、世界はもっと広くていろんな選択肢があるということや、生きる希望を与えることができると学ぶことができました。その言葉に救われたと同時に、私にできることはそれまでだろうかと考えるきっかけになりました。私にできることを考えた結果、日本に帰ってからも貧困について学び続け、日本でできることを見つけようと思うようになりました。フィリピンでは、貧困地域に対する支援が充実しており、その効果は着実に進んでいました。一方で、日本では、貧困家庭が存在していてもあまり知られておらず、その支援についても全国的に進められていない現状があります。私は4月から小学校の教師として働くことが決まっていますが、子どもたちが安心して日々を過ごすことができるように、学校全体や関係機関と連携してこの課題に取り組んでいきたいと考えています。
この活動から学んだこと
小畑 華 外国語学部外国語学科
特に一番印象に残っているのはスラム街への訪問でした。正直私は最初怖かったです。「鞄を前に持っ て、スマホは出さないように」という指示があり、不安が募るばかりでした。
スラム街に足を踏み入れた途端から、私は現地の人と目を合わせることを拒んでいました。ですが、すぐにこれは間違いだと気づきどうして自分はここに来たのか、何を学ぶためにフィリピンに来たのかを考え直しました。その後の子どもたちとの交流で、涙が出そうになりました。おそらく私が想像していた貧困地域に住む人々の様子とは違った光景が目に飛び込んできたからではないのかと思います。このことが自分の中に存在する「貧困」のイメージを変えるきっかけとなりました。そして、私たちが勝手に彼らを「貧困」だと決めつけているのかもしれないと感じました。
また、フィリピンの方々の優しさやとにかく素敵な笑顔も非常に印象に残っています。同時に、「幸せ」についても考えるきっかけとなりました。お金や洋服よりも大切なモノ。忘れがちになってしまいそうな「大切な存在」について自分なりに見つめ直す機会になりました。さらに私たちの普段の生活にはあまり馴染みがない「宗教」についても触れることができました。教会という存在は人々の心の拠り所であると同時に人々を団結させる目には見えない大きな力を秘めていると感じました。スラム街の訪問、フィリピンの一般家庭の体験、小学校や教会の訪問、FHのスタッフの方々やフィリピンの方々との交流。こうした異文化理解やカルチャーショックは今後の自分に繋げられると思っています。
よく考え学んだ一週間
藤田 凛 法学部法律学科
平凡な大学生活を変えたい、何か自分や他人にとって有意義なことがしたい、成長したい、私は大学生になってからずっとこのようなことを考えていました。そんな時に見つけた海外ボランティアはこんな私を大きく変えてくれてたくさんの考え方を教えてくれました。
フィリピンの貧困地域は日本とは違って建物が古く、トイレには便座がない不自由な場所です。そんな場所を見てはじめは私たちが何とかしなければいけない、そう心から思いました。しかしそんな中で印象的だったのは貧困地域の子どもたちや地域の方々の温かい笑顔です。確かに経済的には貧困なのかもしれませんが、彼らは本当に幸せそうで常に笑顔を向けてくれたりたくさん話をしてくれたりしました。
中でも生活体験では鍋敷きの作り方がわからない私に何度も丁寧に教えてくれたり、完成したら一緒に喜んでくれたりとフィリピンの方々のぬくもりが手にとるように伝わってきました。その瞬間、私はフィリピンの方々の温かさを感じたり日本にはない幸せの形に出会うことができたと感じました。
しかしそんな幸せそうな様子を見ると同時に、ボランティアに来たのに結局自分に何ができるのかわからなくなり、どうしようもなく悲しい気持ちにもなりました。今回の活動を通して私が大きく感じた感情はこの葛藤でした。結局自分は無力なのだなと思い、何かできることを探したいと思って参加したのに結局何もできていないことにいら立ちすら覚えました。しかし、これもこのボランティアに参加しなければ考えもしないことでしたし、この体験を生かしてこれからの人生で自分にできることを必ず見つけたいと思っています。
新しい幸せの形
濱田桜音 経済学部国際経済学科(写真㊥)
今回の活動を通して、現地の状況を理解すると共に、異文化に触れたことで初めて客観的に日本を感じることができた。フィリピンに行くまでは、初めて行く海外への期待と、異国での生活に対する不安が混在していた。しかし、現地の人々が私たちを温かく迎え入れ、言葉を理解できず戸惑っている場面では、簡単な英語とジェスチャーを交え常に笑顔を絶やさず話かけてくれたことで自然と不安は消えていった。この7日間では、フィリピンの方の思いやりにたくさん触れ、言葉や文化の壁を越えた素晴らしい経験ができたと感じている。
中でも台ふきや鍋敷きなどで使用するためのマサハン作成をした生活体験。私たちは、かたどられた布を組み合わせ、ミシンで縫う工程の手伝いをした。一見、地味で簡単な作業だが、布のかたどりから手動のミシンで製作するまで相当な時間を要する。この全工程を一人で作業し、更には一枚2ペソ(約5円)で売ると聞き、私は生活の厳しさに衝撃を受けた。
また、ごみが散乱した道、薄黒く汚れた川など、行く先々で目の当たりにするフィリピンの環境状況についても驚きがあった。写真では伝わらない臭いや日常の景色は、現地に行かなければわからなかったことも多く、母国日本がいかに恵まれている環境であるか、改めて知ることができた。当たり前が決してそうではないということも、世界に触れることで違う視点から考えさせられる経験となった。
ただ、この環境の中でもフィリピンの人々は自分なりの「幸せの形」をもち、彼らの笑顔には明るい希望すら感じた。心の豊かさは助け合いの下育まれており、人々の繋がりが幸せを導いているのだろう。日本では気づくことができなかった幸せの形を見出せた。
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