2022年8月ポーランド・ウクライナ訪問記 _7回目 | 活動報告|ハンガーゼロ

活動報告

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2022年8月ポーランド・ウクライナ訪問記 _7回目

田村治郎 巡回スタッフによるポーランド・ウクライナ訪問記です。
日本国際飢餓対策機構HPのスタッフブログに掲載されていたものを転載いたします。


翌日もコンサートの予定があったのですが、なんと岡さんが夜中に高熱を発症。症状からどうもコロナでは?熱の上がりようからこれはすぐにポーランドに戻って、ワルシャワの病院に行った方が良いと判断して、大変心苦しいのですがこの後のコンサートをキャンセルさせてもらいました。さて、一路ポーランドへと言いたいところでしたが、やはりウクライナ現地でどうしてもやらなければならない支援があって、シングルマザー家庭への食料配給や、その場でポーランドへの避難の段取りなど、王さんの仕事が残っていました。


 もう一つ大事なミッションは、避難所となっているリヴィウの教会におられる1組の親子(お母さんマリアさん、2歳の息子と1歳の娘)をポーランドのワルシャワ駅までお連れするというものでした。

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        「避難所となっているリヴィウの教会」


身の回りの最低限の生活用品を車に積んで出発と行きたかったのですが、その時はもう午後の3時を回っていて朝から食事をしていないということなので、ご主人とともに近くのレストランで遅いランチタイムとなりました。まだ20代後半の夫婦です。ご主人は出国できずウクライナに残って来週あたり兵役につくようです。

マリアさんご家族 のコピー.jpg

             「マリアさんご家族」


 食事の間もいつものように子どもの世話をしながらも、この後の別れを思うとこちらが食欲をなくしてしまいました。食事も終えていよいよ出発です。若い夫婦の別れ、抱擁しキスもし子どもともハグしながら別れを惜しんでいました。奥さんと幼い子どもたちは安全な場所に避難し一安心だけれど、ご主人はこれから戦場に赴く。この別れは、今度いつ会えるかわからない、そればかりかもしかしたら生きて2度と会えない別れになるかもしれない。傍で見守る森さんも、私たちも涙を抑えることができませんでした。目の前の状況は、このウクライナで一体どれだけ日々繰り返される別離なのか。1日でも早い戦争の終結をその場で祈りました。

つらい別れ のコピー.jpg

              「つらい別れ」

 さあ、これからワルシャワまでノンストップでも10時間以上はかかります。まずは国境へ。ウクライナのシェヒニ国境検問所に続く道には10キロ以上も続くトラックの車列。ポーランドからウクライナに様々な物資やオイルなどを運び込んだトラックがポーランドに戻るには、この国境検問所の通過に3~4日かかるようです。私たちは人道支援レーンでウクライナの出国は割と早く済んだのですが、ポーランド入国には厳しいチェックが待っていました。3時間待ってやっと順番が回ってきましたが、パスポートのチェックと同時に、すべての荷物を車から下ろし、中身をチェックです。兵士のすることですからスーツケースの中身を引っ掻き回すように確認します。問題なくOKが出ましたが、もうすでに夜の10時を過ぎていました。ここからワルシャワまでは時間的にも、何よりも岡さんの容態を考えると無理と判断して、先日と同じホテルに投宿。

延々と続くトラックの車列 のコピー.jpg

          「延々と続くトラックの車列」


しかし、ここで一悶着ありました。今日中のワルシャワ行きを断念したことにマリアさんが激怒。「私は絶対すぐにワルシャワ駅まで行きたい!車で行けないならここから電車かバスで行く!」と断固として折れない。ご主人に電話し王さんも話されていましたが、この時間に電車もバスの便もあるはずもなく、とりあえずホテルにチェックインして岡さんをベットに寝かせて、マリアさんを近くの駅とバスターミナルに連れて時刻表を確認しましたが、それでも怒りは治らない。ちょうどバスターミナルで一晩明かそうとしておられたウクライナの避難民のご婦人がおられ、マリアさんに一言。「ここはウクライナと違ってチケットがないとバスには乗れないわよ」とい言ってくださったことで、マリアさんの混乱した心の怒りもす~と治まり、ホテルで1泊することになりました。これだけを読まれるとなんだかマリアさんのわがままのように映りますが、確かに王さんも困惑していましたが、2人で確認したことは、住み慣れた街や家から離れ、二人の幼い子どもを抱いてご主人とも別れなければならなかったマリアさんの心の混乱や不安は、私たちには計り知れないものだ。私も以前インドネシア津波支援の避難所で、支援者の働きに文句ばかり言って感謝することさえなかった人々のことを思い出しました。でもやはり、極限の中にいてそんな私たちの常識が通じるわけはありません。支援することはその人に「仕える」ことなんだと、改めて思わされた出来事でした。

 さてその間も岡さんはどうなっているのやら。後で元気になってから聞いてみると、ウクライナを出国したことやホテルのベットに倒れ込んだことも、なんと元気溌剌な2人の子ども達、車の中で暴れるわ、ジュースを撒き散らすわ、おしっこを漏らすわと、国境ではボーダーラインを走って越えようとするわ、それはそれは壮絶な状況も、何一つ記憶にないそうです。

 次回はマリアさん一行をワルシャワ駅までお連れしたり、「岡さん点滴する編」を報告します。

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