ハンガーゼロの様々な活動の報告をいたします。
2022年10月07日
田村治郎 巡回スタッフによるポーランド・ウクライナ訪問記です。
日本国際飢餓対策機構HPのスタッフブログに掲載されていたものを転載いたします。
PCR検査も3度目となれば、もう慣れたもんで、クリニックへ向かう道も覚えてしまったし、検査料金の支払い、「明日の朝8時に検査結果を聞きにくる」と伝えるのも、クリニックスタッフとも顔馴染みになってそれはもうスムーズなもんです。鼻咽頭ぬぐい液でグリグリしてもらう間も、お喋りをしたり、とは言っても言葉が通じませんので、そこは雰囲気で。和やかに検査が済んで、それで陰性になるわけではないのですが、祈る気持ちの現れですかね。
さて、翌日、これもいつものように荷物をまとめホテルをチェックアウトし、いざクリニックへ!3回目の結果は、なんと森さんが陰性で、残りのオヤジ2人が陽性でした。満面の笑みを湛えて森さんは機上の人となりましたが、さて、後に残されたオヤジ2人、まずは帰国便のチケット変更の手続きと4泊分のホテル探しから始めないと。もうこれも慣れたもんで、予約サイトからささっと手続きは完了。
ワルシャワに足止めになっている間も、帰国後即しなければならない仕事がワンサとあるので、互いに部屋に籠もっての作業に励みました。夕食前には、少し早めに外出して、何度も訪れた旧市街を散歩し、仲良くベンチに腰掛けてソフトクリームを味わうなど、一見のどかな時間を過ごしているようでも、実のところ私たちはあるストレスと向き合ってもいました。それは、日本に「帰りたくても帰れない」現実を受け止められない空疎感と、それに対して何も自ら一手を講じられない無力感です。
HungerZeroスタッフになって21年。アフリカ、南米、アジアの様々な活動地に訪問させていただいて、そこでは幾度となく食中毒も経験しましたし、2008年には中国でSARSに罹患して1週間入院もしました。車が橋から転落しかけたことも2度、兵士に銃口を向けられること3度、その度に全身に纏わり付くようなしんどく不快なストレスを感じてきました。しかし、今回の帰国できない状況に陥ってのストレスは、また異質の重さで私たちの心を圧迫しています。
仲良くベンチに腰掛けながら、岡さんとそんな気持ちを話し整理できたことは、このような経験は私たちにとってとても意味ある感謝なことのはずだし、帰りたくても帰れない、自分の意思が全く省みられない状況は、今遠く故郷を離れ、家族とも離別し異国の地で避難を続けておられるウクライナの人々の悲しく辛い気持ちを、100万分の一でも感じ取れることかなあと話していました。もちろん、私たちは陰性証明があれば帰国できますし、あの時点では9月7日以降は無条件で帰国できる立場です。比べるには全くおこがましいのですが、このストレス、この如何ともしがたい気持ちを、これからの支援の働きにあって決して忘れてはならないと、石畳の向こうに沈みゆく夕日に影を伸ばしながら、2人のオヤジはしかと心に受け止めたのでした。
さて、4度目のPCR検査。結果はめでたく2人とも陰性で、やっとこさの帰国と相成りました。背後にある皆様の励ましとお祈り、特にメロデイ会の皆様の絶え間ない励ましとお祈りに感謝申し上げます。
と、これで報告が終わっては何しに彼の地に訪問したのか分かりませんね。次回から現地での活動を紹介いたします。お楽しみに!